腰痛に対するマッサージ効果ははっきりしていない

 

信頼できる治療院、施術者かどうかを判断するための決め手の一つが、「腰痛治療に対してどのような考え方(理論)に立って、どのような技術を提供しているか」ではないでしょうか。

 

一般的に、「腰痛にはマッサージが良いのでは」と考えて、定期的にマッサージを受けているという方もいらっしゃるかもしれません。
はたして、その効果のほどはどうなのかといえば、腰痛治療を目的とするなら、それだけでは期待薄です

 

確かに、マッサージを受けると血流が良くなって一時的に痛みが和らぐ効果はありますが、『腰痛診療ガイドライン』(前出)でも

 

「他の一般的な療法と比べて治療効果に差はない」
「1か月以上続く痛みにはマッサージの効果ははっきりしない」

 

と記されています。

 

また、いわゆるクイックマッサージや一般的な整体院でやっているモミモミ中心の施術も同様で、筋肉のこりはほぐれても根本的な改善は望めないでしょう。なぜなら、マッサージは、皮膚への刺激によって自律神経系や免疫系などに作用して、筋肉の緊張を緩和し、血液やリンパ液の代謝を向上させて自然治癒力をアップさせる働きを期待するもので、それだけでは腰痛そのものの原因を特定(鑑別)して、根治に導くための技術とは言えないからです。

 

あくまで一時的な対症療法であって、完全治癒を目ざしてその原因そのものを取り除こうとする根治療法(原因療法)ではありません。

 

「イタ気持いい」などの強い刺激を受けていると、腫れたり、もみ返しが起きるおそれもあり、くり返しているうちにさらに強い刺激を求めるようになって、ヘタをすると内出血する場合もあるので、注意が必要です。

 

治療を目的としたマッサージであれば、ちゃんと原因を鑑別したうえで、揉む必要があれば揉むし、関節を調整する必要があるなら関節部への適切なアプローチを行います。

 

この不具合の原因を正確に特定(類推)する「鑑別技術」をどれだけ持っているかが、信頼できる施術者かどうかの決め手になると言っても決して過言ではないでしょう。

 

仮に、筋肉疲労が原因だとしても、マッサージのみで筋緊張を緩和するだけでは不十分で、弾力(張力)が失われた緩み過ぎた筋肉の緊張力を正常化させるストレッチングも必要です。

 

これは、「筋肉トーヌス(緊張力)を整える」ためのストレッチで、これによって、血行促進、可動域の改善、疲労回復、ケガの予防、疼痛の除去などの効果が期待できます。

 

要するに、筋肉は緊張と弛緩のバランスが大事で、ただ「こわばった筋肉を緩めれば良い」というものではないのです。

 

一方、背骨の矯正を行うカイロプラクティック(カイロ)の場合は、前述したように脊柱マニピュレーションという手技が効果的との評価がなされており、私の経験からしても、骨格矯正による治療効果は期待できます(もちろんカイロプラクターの腕にもよりますが)。

 

しかしその反面、椎間板を損傷しているケースだと症状の緩和は難しく、運動器系の腰痛の原因を脊柱の歪みだけに一元化して、一つの技で背骨のみに対処しようとしてしまうところに、自ずから限界もあるのも事実です。

 

なぜなら、腰痛の原因は、骨の歪みだけでなく、「筋・筋膜性」「関節性」」「椎間板性」由来の痛みがあって、椎間板に原因がある場合は、椎間板にアプローチする必要があるからです。

 

いずれにしても、「治療目的」ではない施術は、痛みの原因を鑑別できるかどうかは問われず、また効果がはっきりしなくても許されるユルさがあるので、患者サイドでよく見極める目が養われていないと、「高い料金を払って通っているのにいっこうに良くならない」「宣伝に騙された!」「インターネットでの評判とは違っていた」などと嘆くことになりかねません。