原因が特定できないからといって諦めてはいけない!

 

これは裏返せば、「西洋医学による標準治療では対処できない腰痛が大半」だということです。

 

そうなると、ギックリ腰や慢性腰痛など原因が特定できない腰痛は、「完治することはないので長くつきあっていくしかない」と半ば諦めてしまう人がいるのかもしれません。

 

しかし、決してそんなことはありません。非特異的腰痛であっても適切な「保存療法」を受けることによって症状が改善し、痛みから解放されて平穏な日常生活を送ることは夢ではないのです。

 

柔道整復術と呼ばれる保存療法においても、腰痛治療は十分守備範囲内で、医師とは違って血液生化学検査やレントゲン検査はできなくても、手技による鑑別と理にかなった独自の技術によってしっかりと結果が出せます。

 

どんな療法なのかについては後ほど詳しくお伝えするとして、まずは非特異的腰痛に対して行われる一般的な保存療法について説明しておきましょう。

 

保存(的)療法とは、外科的手術以外の治療法を指します。主な療法としては、

「薬物療法」
「神経ブロック療法(ブロック注射)」
「理学療法」
「運動療法」
「鍼灸あん摩マッサージ」
「柔道整復術」

などがあります。
これらの治療法の中には、効果のはっきりしているものとそうでないものも含まれていますが、全体としてみた場合、ある程度の治癒効果が期待できます。

 

一例として挙げると、手術以外の保存療法を受けた患者を5年後に追跡調査したところ、50%の患者は症状がなくなり、42%の患者は症状はあるけれど日常生活には支障がないという結果が出ています。この調査報告によると、手術を受けなかったために日常生活で困っている患者はわずか8%に過ぎなかったということです。

 

また、椎間板ヘルニアの場合、画像検査で明らかな圧迫所見があっても手術をせず、保存療法や時間の経過とともに大部分の人がよくなっていくのも事実で、本当に問題になる腰痛は全体の1割程度でしかないということです。

 

ちなみに、椎間板ヘルニアが手術適応になるのは、膀胱直腸障害(失禁)を伴う場合、神経麻痺や下肢の筋力が著しく低下している場合、保存療法を継続できない(長期間の通院が難しい)場合と考えられます。

 

このことから、「原因がわからない腰痛であっても決して諦める必要はない」ということがおわかりいただけるかと思います。

 

通常、整形外科を受診して、筋肉や関節、骨、椎間板などに絡む腰痛と判断され、外科的処置が必要ではないケースに対しては、前述の保存療法が施行されます。

 

薬物療法は、外用薬と内服薬があり、外用薬は湿布や軟膏などの塗り薬、内服薬としては痛み止めの消炎鎮痛剤、血行を良くする血流改善薬、筋肉の緊張を和らげる筋弛緩剤、筋肉や神経に作用して痛みを和らげるためのビタミン剤などがあります。

 

神経ブロック療法は、激しい痛みを軽減させるために、神経や神経の周辺に局所麻酔薬を用いて一時的に痛みの伝達をブロックする方法で、それゆえブロック注射とも呼ばれています。

 

手術療法と薬物療法の中間に位置づけられ、患者自身の治癒能力を活性化し痛みを和らげる治療法と言われていますが、症状に合わせて数回の注射が必要となります。

 

理学療法は、物理的な刺激を与えて筋肉の過剰な緊張をゆるめたり、神経の働きを回復させたりする目的で行われるもので、一定期間コルセットを装着する装具療法や、骨盤にベルトをかけて牽引する牽引療法の他、マッサージやリハビリなども理学療法に含まれます。

 

運動療法は、適度なストレッチや筋肉トレーニング、また、他動的に関節運動を行うことで腰痛の改善、再発予防をはかる方法で、特に3か月以上の慢性腰痛に対する有効性には高いエビデンス(科学的根拠)があります。

 

ちなみに、WHO(世界保健機関)では理学療法の中に運動療法を位置づけていて、理学療法を
「運動療法、熱、低温、光、水、電気、マッサージなどを用いる身体的治療の科学及び技術であり、治療目的は鎮痛、循環促進、障害の防止、関節の可動性、筋力の協同性などの最大限の回復を図る療法」
と定義づけています。

 

日本において、

@理学療法の一つとして、「理学療法士」(有国家資格)が行うマッサージ
A国家資格を有する「 あん摩マッサージ・指圧師」及び「柔道整復師」が行うマッサージ
Bその他、「民間資格のセラピスト」が行うもの

がありますが、法的には国家試験にパスした@とAによるものを医学的根拠のある施術と呼びます。