400年の歴史を持つ日本の伝統的な手技療法

 

では、私たち柔道整復師が行っている柔道整復術はどうなのか?
まずは、柔道整復術(師)について「よく知らない」という方のために簡単に説明をしておきましょう。

 

現在、柔道整復師(以下、柔整師)は、厚生労働省免許の国家資格となっていて、機能訓練指導員としても認められている資格です。

 

そもそも、整復術は、400年以上の歴史を持つ日本の伝統的な手技療法で、その発祥は柔術や古武道などの伝統武術の活法、いわゆる筋骨格系の治療術で「骨つぎ」と呼ばれてきました。

 

昔から、「骨つぎ」は筋肉や骨格系の治療を受け持っていて、内臓系を受け持つ「医者」と、入れ歯をつくったり口腔内を受け持つ「歯抜き」(現在の歯科医師)に並んで三大医療の一つでした。

 

「骨つぎ」という言葉からわかるように、柔整師は、骨折してしまった患部を正常な位置に戻す整復技術を習得しています。

 

整復というのは、骨折・脱臼・捻挫・挫傷・打撲などの損傷によって正常な位置から逸脱した骨・軟骨・関節などの硬組織や、筋・腱・靱帯などの軟部組織を正常な位置に復元させる技術の総称で、原因を探るために手技を用い、レントゲンを撮ったり手術をしないので「非観血的療法」とも呼ばれます。

 

この原因を探る技術を鑑別と言うわけですが、具体的には問診と触診に当たるさまざまな検査によって、どこにどの程度の不具合があるかを診断していきます。そして、医者と同じように、仮説に基づいて治療計画を立て、それに沿って治療を施していくわけです。

 

元来、柔整師が得意としてきたのは主に骨折や脱臼だったので、かつては「接骨院」という看板を掲げているところが多かったのですが、最近では骨を正しく接げる柔整師は少なく、骨格矯正などの他の手技療法やいろいろな理学療法を取り入れることによって全身を整える「整骨院」という看板を掲げる治療院が増えています(ですので本文中では接骨・整骨院と記します)。

 

柔道整復術は、従来の保存療法としての枠組みに入っていないことから、『腰痛治療のガイドライン』では取り上げられてはいません。しかし、カイロプラクターでもある私の経験からしても、柔道整復術では原因を鑑別する技術に加えて、自然治癒力を引き出すための手技療法や、適度な運動によって機能回復をはかる運動療法などを行うことから、腰痛治療への効果はかなり高いと断言できます。

 

柔整師は、整復法の他に、骨折や脱臼した患部をギプスなどで固定して回復を図る固定法、さらに後療法と呼ばれる手技療法や運動療法、リハビリ技術などを習得しているので、骨や筋肉などの運動器系のトラブルに対して総合的なアプローチが可能です。

 

もちろん、施術者の経験値や技術によって差はあるものの、各種の手技療法と併せて適切な運動療法を施すことができれば、腰痛治療に対してもより高い効果を発揮できます。

 

例えば、最近増えている椎間板の損傷を伴うギックリ腰の場合でも、椎間板の突出程度が中程度以下であれば、手技による保存的療法で改善する確率は非常に高いと思います。

 

腰痛患者さんの場合、特に知りたいのが、「治るのか?」「治るとしたらいつ頃まで治療に通えばいいのか?」だと思いますが、良心的な接骨・整骨院なら、初診でしっかりと治療計画を立てて患者さんに伝えるか、計画書を手渡すので、患者さんにとってはとても安心でき、希望が持てます。

 

その治療計画に沿って通院回数や頻度がある程度決まってくるので、職場や普段の日常生活、あるいはスポーツのトレーニングに復帰できる時期も想定しやすくなるからです。

 

また、カイロや整体が全額自費なのに対して、接骨・整骨院では原因がはっきりしている症例については保険が適用されることもあるので、患者さんにとっては負担が少ないという利点もあります。

 

このように、基本的に治療目的での施術を提供しているのが柔整師であり、接骨・整骨院だということがおわかりいただけたかと思います。

 

そこで、もし治療計画通り改善が見られない場合は、他の重篤な疾患による危険信号(レッドフラッグ)がないかどうか確認し、しかるべき医療機関や医師と提携するなど、常に患者さんに寄り添った治療を心がけている治療院であれば、より信頼できると思います。

 

さらにそのうえで、現場の術者が腰痛に対してどのような考え方、理論に則って施術に臨んでいるかがとても重要です。それによってどのような技術が求められるかが決まり、その技術レベルの高低によって治療効果に大きな差が生まれるのです。