「腰を反らしてはいけない」というのも間違い!?

 

次の話も、すでに書き換えられている時代遅れの常識です。

 

やや専門的な話題になりますが、大事なことなので触れておきます。

 

かつては、坐骨神経痛や腰痛治療に対して、「腰椎を屈曲することは奨励されるが、伸展方向の運動はやってはいけない(禁忌)」とされていました。  
ですが、これも誤りであることがわかっています。

 

腰椎屈曲というのは腰を前に曲げる、いわゆる前屈のことで、反対に腰を後ろに反らすことを腰椎伸展、あるいは後屈と言います。

 

「腰椎を伸展するのは禁忌」とされるのは、腰を反らせると神経を圧迫してしまう恐れがあるからというのがその根拠だったのですが、その可能性があるのは脊柱管狭窄症など一部の特異的腰痛の場合であって、腰を反らすと痛みが出る後屈障害型腰痛の大半は、実は「腰椎前彎」が失われていることに起因しています。

 

腰椎前彎とは、背骨からつながってS字型に彎曲している腰椎(脊柱)のカーブです。

 

つまり横から見た時、上から順に、頚椎の並びは前彎、胸椎は後彎、そして腰椎が前彎して生理的なカーブを描いているのが本来の理想的な背骨の形。

 

この脊柱のS字カーブによって重力の負担を軽減しているわけですが、仮に腹筋が弱くなり腰の部分から丸まってしまうような猫背タイプで、骨盤が後ろに傾いて腰椎前彎が失われてしまうと、頭部や上半身の重み、つまり重力による負荷がダイレクトに腰椎にのしかかってきます。

 

この状態が長く続くと、腰の骨の一部が後方に突出し、骨と骨の間にある椎間板の前方が圧迫される代わりに後方が傷つきやすくなり、腰痛の原因になってしまうのです。

 

したがって、運動療法によって自然な前彎を回復することが大事で、そのためには腰椎の伸展方向の運動が不可欠です。

 

実際に、専門医による調査でも、これまで腰椎伸展をしてかえって腰痛が悪化したという報告はなく、私自身の経験からも適度な伸展は自然な前彎を取り戻し、治療効果を高めるのは明らかです。

 

考え方としては、

 

@後屈(伸展)で痛みが出るのは関節性腰痛であり、前屈運動で改善する。
A前屈で痛みの出るのは椎間板性腰痛であり、後屈運動で改善する。
B腰部の伸展運動は腰椎の自然な前彎を回復することにより腰痛を治癒させる、ことです。

 

また最近は、腰椎や骨粗鬆症などに伴う腰椎前彎減少は、筋肉の血流量を減少させ、老廃物が蓄積し、その結果、筋内圧が上昇して腰痛の原因になり得るという報告もあり、このような点から見ても、やはり前彎回復のための腰椎伸展の必要性は新たな常識と言えるでしょう