日本国民の4人に1人以上が腰痛に悩まされている

 

腰痛患者の数は、日本全国で約2800万人と言われています。おおよそ日本人の4人に1人は腰痛持ちということになるわけですが、中でも働き盛りの40代から60代にかけてはほぼ半数近くの人が腰痛に悩まされているのが現状です。

 

厚生労働省の平成25年国民生活基礎調査によると、腰痛は男性では1番目、女性でも肩こりに次いで2番目に訴えが多く、その数は増加傾向にあることから、まさに国民病と言ってもいい様相を呈しています。

 

もちろん、ひと口に腰痛と言っても症状や原因はさまざまで、痛みや痺れが発生する部位によっても疾患名が異なります。

 

一般的によく知られている腰痛は、

急性腰痛症(ギックリ腰)
腰椎椎間板ヘルニア
筋筋膜性腰痛
腰椎分離症
脊柱管狭窄症
圧迫骨折

などがありますが、ギックリ腰の原因にしても、椎間板の損傷、関節の機能低下、骨の異常や筋肉の障害、ストレスなどさまざまな要因が考えられます。

 

そこでこのセッションでは、まず腰痛の基礎知識について確認しておきましょう。

 

背骨は頸部(頸椎7個)、胸部(胸椎12個)、腰部(腰椎5個)と土台の役割をする仙骨で構成されており、何らかの原因で腰椎に負担がかかったり、障害が起きることによって腰痛が発症します。

 

腰痛を医学的に分類すると、「特異性」「非特異性」の2つに分けられます。

 

特異性とは、明らかに病変があって、西洋医学の診察や画像検査などによって原因が特定できるもので、腰痛全体の約15%がこのような「特異的腰痛」と考えられています。

 

この腰痛の中で、代表的なものとしては、腫瘍、化膿性脊椎炎、脊椎カリエス、椎体骨折などに加えて神経症状を伴う腰椎疾患も含まれます。これらはある程度レントゲン(X線)などの画像検査でわかります。

 

例えば、坐骨神経痛を伴う椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などは、MRI(磁気共鳴画像診断)検査やCT検査、脊髄造影などによって確定されます。

 

椎間板ヘルニアは、腰部の椎間板が変性して硬くなくなり、線維輪に亀裂ができて内部の髄核が外に飛び出る疾患。腰部脊柱管狭窄症は、背骨の歪みや椎間板ヘルニア、また靱帯の肥厚などが原因で脊柱管が狭くなり、立位や歩行によって血流障害を起こし、坐骨神経痛やしびれが増す疾患で、いずれも理学的所見と画像検査、そして他の病気との鑑別を行った上で診断が下されます。

 

また他にも、感染や内臓の病気などが原因で発生する腰痛もあり、それらも特異的腰痛に含まれます。

 

例えば、腎結石、尿路結石、腎盂腎炎、泌尿器系の疾患、子宮内膜症や子宮筋腫などの婦人科系の疾患、腹部大動脈瘤などの血管系の疾患、等々です。

 

このように比較的原因が特定しやすい腰痛に対して、レントゲンやMRIなどの画像では異常が見られず、痛みがあるのに明らかな原因を特定できないものを、「非特異的腰痛」と呼びます。
例えば、過度のストレスや不安、うつなどが引き金となる心因性腰痛症。この場合は、ストレスによって自律神経のバランスが崩れて血行が悪くなったり、筋肉が過度に緊張して起こることから、上手にストレスを発散したり、心療内科や精神科への受診が必要になってきます。

 

また、骨盤の歪みが腰痛の原因になることもよくあるケースです。

 

特に現代女性は、出産後、骨盤が開いたままになっていて、そのため肥満になったり、腰痛になりやすくなっています。

 

昔は産後、腰にさらしを巻いたり帯を絞めるなどして骨盤を閉めていたのが、今はそのような習慣が失われ、それが腰痛の原因の一つになっているわけですが、骨盤が開いたままだと、仙骨と腸骨をつないでいる仙腸関節の動きが不安定化して、腰痛を発症させやすくするのです。

 

その他、ギックリ腰などの急性腰痛や変形性腰椎症、筋筋膜性腰痛症、椎間関節障害、仙腸関節炎なども、医師がX 線検査をして診察しても原因が特定できないことから、「非特異的腰痛症」 と診断され、これら非特異的腰痛は実に腰痛全体の85%もあります。